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【連載】認知症とともに生きる(1)「認知症フレンドリー」な社会を目指して

更新日:2022年4月22日


朝日新聞社からASAへ過去に提供されたコラム「認知症とともに生きる」を全3回にわたってお届けします。
毎月10日に1回ずつ掲載します。
認知症の人や認知症の人が身近にいるという方ばかりでなく、社会全体で彼らを取り巻く困難に理解を深め、彼らが安心して暮らしていける社会になるよう、本連載がそのきっかけになれば幸いです。
 

認知症とともに生きる(1)「認知症フレンドリー」な社会を目指して


(1)「認知症フレンドリー」な社会を目指して

朝日新聞 東京本社 総合プロデュース室 坂田一裕

 

 朝日新聞社は、グループ全体で「認知症フレンドリープロジェクト」を展開しています。超高齢化が進むなか、認知症になっても本人の尊厳が守られ、住み慣れた街でいままで通り安心して暮らしていける社会づくりを進める活動です。

 2019年6月20日、警察庁からこんな発表がありました。昨年1年間に警察に届け出があった認知症の行方不明者は延べ1万6927人で、前年より1064人多く、統計を取り始めた年以降、6年連続で最多を更新したというのです。

 みなさんは「認知症の人が行方不明になった」と聞くと、「徘徊(はいかい)」という言葉を思い浮かべませんか。徘徊を辞書で調べると、「あてもなくウロウロ歩き回る」という意味になります。まさに、我を忘れて街をさまよい歩くイメージでしょうか。そこには「迷惑な人」「困った人」という印象がつきまといます。

 しかし、認知症の人に話を聞くと、本当は行きたい場所や目的があったのに、「迷ってしまった」、あるいは「目的を忘れてしまった」というのが実情です。そのため「徘徊」という表現について本人や家族から「抵抗を感じる」という声が上がっていました。

 そこで朝日新聞社は18年3月25日付の紙面で、一つの宣言をしました。朝日新聞の今後の記事で、認知症の人の行動を表す際に「徘徊」の言葉を原則として使わず、「外出中に道に迷う」などと表現することにしたのです。

 これは表現を制限することではなく、本人の視点に寄りそう考え方に基づきます。「道に迷う」と表現すれば、「迷わないようにどう手助けすればいいのか」と考えることにつながると期待するからです。

 ただの言葉の使い方の問題と思われるかもしれませんが、「徘徊」を使い続けていると、認知症の人は常に「わけがわからない人」という発想から抜けきれません。その延長線には「監視する」「外出させない」という考えにつながりかねない危うさがあると思います。

 認知症介護研究・研修東京センター研究部長の永田久美子さんはこう話します。

 「行方不明になった認知症の人の約7割は、ふだんは一人で外出し、商店街で買い物したり、友達に会いに行ったりするなど、私たちと同じ地域で普通に暮らしている人たちです。途中でストレスを感じたり、予期せぬことがあったりするとわからなくなることがあります。でも、周囲のほんの少しの助けがあれば落ち着きを取り戻し、ふだんの生活を続けることができます。特別な人として冷ややかにみたり、やり過ごしたりしてしまうのではなく、あいさつなどの声かけや、ちょっとした関わりで救われる人がたくさんいます」

 全国の朝日新聞販売所(ASA)では、認知症サポーターの育成に力を入れています。本社員が養成講座の講師となり、すでに約5千人のサポーターが誕生しています。ASAスタッフが地域の見守り役を果たしています。

 こうした取り組みが、認知症の人を含むさまざまな困難を抱えている人にとっても安心して暮らしていける社会づくりの役に立てればうれしいです。


認知症の行方不明者警視庁まとめ
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